英国だより

第65回目-女性運動から-

生徒たちは3年生になると、世界に先駆けて1740年頃から始まった産業革命について学びます。これを境に私たちが住む世界は、大きく様変わりをします。生活が豊かで便利になり、自宅と仕事場が異なり、ホリデーという感覚が出来るなど、あらゆる分野において現在のような生活に変化します。そのうちのひとつに女性地位の変化があります。当時は階級によって、女性の生きた方も違いました。さらに、道徳的にもかなり縛りが強く、ヴィクトリア朝は「上品な時代」とまで言われました。

先日、ロンドン・フィルム・フェスティバルのオープニングを飾った作品「サフラジェット」Suffragetteを鑑賞しました。広告には世界を励ました女性たちと賞賛されInspired by the women who inspired the world 是非とも鑑賞することを薦めていました。The film you need to see女性の権利のために戦った物語で、選挙権を得るまで危険をかえりみず戦った婦人参政権運動家たちの姿を描いています。同じ女性としてこの運動で戦った人々の思いを大事にしなければいけないと今更ながらに痛感した次第です。ちょうど10月22日の朝日新聞にも「性差別で問い続けた20年」と題して記事が掲載され、1975年の国際婦人年から現在までの歴史をたどっていました。

映画を鑑賞したあと、ドックランド博物館Museum of London Docklandsで開催している写真展Christina Broom: Soldiers and Suffragettesにも出かけてみました。ブルーム女史は初の報道写真家として第一次世界大戦前後に活躍をし、お嬢さんのおかげで多くの作品が残っています。ちょうど映画に出てくる場面を思わせる写真がありました。常設展はロンドン博物館Museum of Londonにあるので、いつでも見ることが出来ます。資料を見ると知らなかったことが多々ありました。19世紀になると団体を結成しますが、運動の中で過激な行動に出る人々と、さらに穏健的な行動を取る人々に分裂をしました。映画では暴力的な行動に出た人たちが描かれていました。議会で認められなかった法案改正に失望し、窓に石を投げつけて壊したり、家を爆破したりする行動に出ます。彼女たちは「言葉でなく行動に移せ」Deeds not wordsをスローガンにしました。テロリストと呼ぶのは簡単ですが、彼女たちの思いを知ることが必要ではないでしょうか。牢獄に幾度か入ったり、命を投げ出すことになったりとひたすら女性の権利のために闘っていました。戦争で女性労働者が必要とされたことで社会進出が進み、1918年の選挙法改正で初めて30歳以上の女性にも選挙権が与えられ、1928年には男女同年齢での選挙権が実現し、今では18歳になっています。日本は1945年に実施されました。

私の世代で女性たちは家庭に入り、幸せな結婚をすることでした。私はそのような状況に強く反発していました。大学を卒業後に数年勤務をして結婚。寿退社をして子供を育てることを社会からも求められました。私からすると時代が違えば、母はきっと社会で活躍した気がします。早くに結婚をし、ひたすら気難しく厳格だった父に仕え子供を育てた母を見ながら、残念に思ったものです。もちろん母が文句を言ったわけではなく、当時としては当たり前で幸せだったのです。私は卒業後すぐに仕事を始めましたが、社会の変動も大きく環境も異なりました。ロンドンでは数日前に男女の賃金格差が話題になっています。幸運なことに教員の世界は男女平等ですが、それでも女性管理職はまだ少ないようです。これからも歴史を学びながら、生徒たちには性別に関係なく、自分らしさを見つけて大いに社会で活躍をしてほしいと願っています。